読書記録 2022年10月

 今月はSF(Science Fiction)の三冊を読んでみました。海底二万里のジュール ヴェルヌの今注目されている海底の世界とその美しさ、十二国記の序章としての現代社会での妖怪の出現、記憶翻訳者の2巻のうちの最初の巻でしたが、どれもSFとしての設定が良くできていること、つまり科学で明らかにされている前提からしっかりそれぞれの世界が構築されており、それぞれの物語への展開が現実社会のパラレルワールドとして魅力的でした。

10月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:1400
ナイス数:72

記憶翻訳者 いつか光になる (創元SF文庫)記憶翻訳者 いつか光になる  (創元SF文庫)
 自分の考えていることや感じたことは、表現しなければ誰にもわからないし、知ることは出来ない。でも、雰囲気や挙動のようなことから感情が漏れて共感することができる人もいる。そんな強すぎるとマイナスになることにもなる共感性を、SFっぽく感じられないようなリアルさとギミックで、自分や大切にしたい人の理解として求めようとする展開にとても共感できた。(感想
読了日:10月27日 著者:門田 充宏


魔性の子 十二国記 0 (新潮文庫)魔性の子 十二国記 0  (新潮文庫)
 自分と関係のないところで、自分の意思とは関係もなく、他人の価値観で物事が動いてしまうことの違和感の解消はなかなか出来ない。ましてや、引き続き起きてしまうと、自分が生きている意味がわからなくなってしまう。でも、その理由に気が付くことによって、生き方を受け入れてやっと生き方の筋が出来るようになるのかもしれない。(感想
読了日:10月12日 著者:小野 不由美


海底二万里 (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)海底二万里  (集英社文庫―ジュール・ヴェルヌ・コレクション)
 長編物語で、地球各地でのイベントがハラハラドキドキしたり、美しいものと遭遇したり、世界にのめり込んでしまった。なぜ探索を行うかということもテーマのひとつではあると思いますが、海への探索は19世紀後半の当時だけではなく、今でも未解明なフロンティアであることを思うと、単なる空想科学小説を越えた魅力を感じた。(感想
読了日:10月03日 著者:ジュール ヴェルヌ

読書メーター

読書記録 2022年9月

 高校のころに読んでいたオー・ヘンリーの短編集が発掘されコツコツと読み直していました。ショートショートの醍醐味があり、当時では難しく感じた文章も今となってはだいぶ読め機微を感じられるようになりました。読み直しの発見を感じることができました。

9月の読書メーター
読んだ本の数:1
読んだページ数:237
ナイス数:27

O・ヘンリ短編集 (3) (新潮文庫)O・ヘンリ短編集 (3) (新潮文庫)
読み慣れたからなのか、これら3部作のなかでもおもしろいものが多かった。よく知られている最後の一葉から、一ドルの価値、ブラックジャックの売り渡し人、にせ医者物語、心と手、都会の敗北、都市通信とそれぞれの後半で一気に物語が輝いていた。何気ない生活のなかでも、何かが起こる要素がいつもあり、感じ取っていたい気持ちになった。(感想
読了日:2022年09月07日 著者:O・ヘンリ

読書メーター

読書記録 2022年8月

今月は、地形にはまってしまった。東京の地形は、調べれば調べるほどおもしろく、バーチャルなwebの空間で地図を眺めながら、実際の実地での地形をその土地に刻まれた歴史を感じてみたくなった。相変わらず、探索する時間が欲しいです。

8月の読書メーター
読んだ本の数:6
読んだページ数:1334
ナイス数:143

東京スリバチ地形入門東京スリバチ地形入門
東京の谷と台地のスリバチ地形を文章でまとめられていて、他の本での地図で視覚化された情報では各論となって拡散されがちだった内容を、特徴付けられるポイントとしてより整理できた。また、地形だけでなく、その背景にある暮らしのなかの生活や歴史が色濃く反映されている視点についてもいろいろな方がトピックスとして挙げており、街歩きする時の土地を知る楽しみ方が大きく広がった。(感想
読了日:2022年08月30日 著者:皆川 典久


東京スリバチの達人 分水嶺東京南部編東京スリバチの達人 分水嶺東京北部編
今回も現在の地図と過去の地図を重ね合わせて、地形の変化や建物の変化など東京の土地の変遷を知ることが出来た。人々がどんな場所に、どのようなものを作って来たのか、意図や感覚を感じることが出来た。東京区部の南部も見所が多く、暗渠から水源を辿り云われを知るような、気付きのある散歩が出来そう。(感想
読了日:2022年08月25日 著者:皆川 典久


東京スリバチの達人 分水嶺東京北部編東京スリバチの達人 分水嶺東京北部編
今回は現在の地図の高低差やスリバチたけでなく、明治時代、さらには江戸時代の地図を重ね合わせて、土地の変遷を見ていくことで変化を楽しむことが出来た。いわゆる云われというものがどのように創られて来たのか、その点も辿ることが出来て興味深かった。東京の北部の内容で、続編が南部で引き続き楽しみ。(感想
読了日:2022年08月20日 著者:皆川 典久


凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 多摩武蔵野編凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩 多摩武蔵野編
今度は東京の東端からに西に向かい、武蔵野台地のスリバチ地形散歩であった。台地というと何もないようだが、スリバチコードから辿る湧水や谷戸、崖の存在はおもしろかった。標高50mのオアシスやいにしえの扇状地のようなキーワードも魅力的で、それぞれの土地の云われを知ってみたくなった。(感想
読了日:2022年08月16日 著者:皆川 典久, 真貝 康之


凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩2凹凸を楽しむ 東京「スリバチ」地形散歩2
前回の内容よりもさらにスリバチ地形についての記述や説明が詳しく解りやすくなっている。東京の谷戸、窪地、暗渠などちょっとした高低差に過去の土地の歴史が現れていることに、東京、江戸の名残がこんなにも残されていることに気が付き、改めて街の散策が楽しくなりそうだ。(感想
読了日:2022年08月16日 著者:皆川 典久


流浪の月流浪の月
はじめのうちは、ネガティブな感情が多く引き起こされ、なかなか読むことが辛いことも多かったが、ある時からまるで何かが吹っ切れたように、一気に話が進んだ感覚だった。事実は真実と異なる、真実を知るのは当事者たけかもしれないし、本人だけかもしれない。そんな価値観があることを忘れないで生きたい。(感想
読了日:2022年08月05日 著者:凪良 ゆう

読書メーター

読書記録 2022年7月

 今月は、本棚の中から取り出したO・ヘンリーの短編集を懐かしく読みました。また、映画の公開が近づいているタングのロボットシリーズを2編読みました。時代を越えて、人というものの良さというものは何だろうと感じるところが多かったです。

wwws.warnerbros.co.jp

 

7月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1362
ナイス数:70

O・ヘンリ短編集 (2) (新潮文庫)O・ヘンリ短編集 (2) (新潮文庫)
今回も日常の中の些細な活動が、人生に大きく影響をしたり、しなかったり、その中での心の機微が面白かった。賢者の贈り物、マディソン・スクエア・アラビアン・ナイト、運命の道が良かった。どちらかというと、ハッピーエンドのお伽噺ではなく、人生成るようにしかならないさ、そのなかでも大切なものを大切にしていこうよ、というメッセージを感じることが出来た。(感想
読了日:2022年07月16日 著者:O・ヘンリ


ロボット・イン・ザ・ハウス (小学館文庫)ロボット・イン・ザ・ハウス (小学館文庫)
今回も実際にタングやジャスミンがいたら、楽しいだろうなと思うことばかりだった。絆が深まるとはこのようなこと、というようなどこの何よりも純粋なホームドラマのようだった。ロボットだからこそ、余計に人間らしい行動や思考の意味合いを表現して来るときに、気づかされることも多いのかもしれない。何だか優しくなれたような気がする。(感想
読了日:2022年07月12日 著者:デボラ インストール


O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)O・ヘンリ短編集 (1) (新潮文庫)
短編で完結するストーリーのおもしろさを十分楽しめた。以前の自分ではなかなか読みきれなかった人間の機微が、今では以前よりもわかるようになっているようで、感じることが出来た。「よみがえった改心」や「警官と賛美歌」は良くできており、「アラカルトの春」のうち間違いや「水車のある教会」の小麦粉をひっかぶる風景はノスタルジックのある、今では失われているようなストーリーを思い出された。引き続き続刊が楽しみ。(感想
読了日:2022年07月07日 著者:O・ヘンリ


ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)ロボット・イン・ザ・ガーデン (小学館文庫)
ロボットの出来損ないに見えるタングと、どんな有能なアンドロイドより、一緒にいることが愉快で楽しいと感じるベンとのやりとりが、かわいくおもしろかった。タングの持っている振る舞いや人間らしさから気づかせられることも多く、ベンと同じようにそんなこともわからないのというような顔をされても許せてしまう、ロボットなのに人間らしさの真髄が散りばめられていて、おもしろかった。(感想
読了日:2022年07月01日 著者:デボラ インストール

読書メーター

読書記録 2022年6月

2022年 6月の読書記録です。

なかなか読書が進まないのですが、読みたいと思っていた本をいろいろと入手しました。そのなかから少しずつ読み進めたいです。

6月の読書メーター
読んだ本の数:1
読んだページ数:368
ナイス数:38

南総里見八犬伝 1 (岩波文庫)南総里見八犬伝 1 (岩波文庫)
なかなか面白かった。少し読みにくさはあるけれども、表現は色鮮やかで、登場人物の思考や躍動感がたまらなかった。単なる勧善懲悪ではなく、苦しみながらも状況を打開しようと、時には誤った事も起こしてしまうが、その中でのもがきを描いて、そんなに上手くいかないよね、というリアルな共感や生き方の粋を感じとることができた。二人の八犬士の登場からの展開も楽しみ。(感想
読了日:2022年06月09日 著者:曲亭 馬琴

読書メーター

読書記録 2022年5月

2022年 5月の読書記録です。

今月はやっと一冊読むことが出来ました。本屋でお薦めでしたが、がっつりSFもよいものです。本を読む時間を確保したいところです。

5月の読書メーター
読んだ本の数:1
読んだページ数:329
ナイス数:22

時間衝突【新版】 (創元SF文庫)時間衝突【新版】 (創元SF文庫)
本屋でお薦めだったSFだったが、世界に引き込まれてしまった。タイムマシンに無理矢理乗せられて、過去に来たはずなのに、遺跡は新しくなっていた。その解明だけかと思いきや、次々と様々な世界が現れ、それぞれに自分の正しいと思う道を進んで行く。時間が歪むいびつさの感覚も伝わるような、人類のどうしようもなさを嘆くような、何とも言えない感じが残る印象的な小説だった。
読了日:2022年05月17日 著者:バリントン・J・ベイリー

読書メーター

abc予想の解明とアインシュタインとの相似

 NHKスペシャル数学者は宇宙をつなげるか? abc予想証明をめぐる数奇な物語」がおもしろかった。

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 日本人の数学者である望月新一教授が、数学界で難問とされている「abc予想(abc conjecture)*1 」を解いたとされたが、難解すぎて本当に正しいのかわからないという。

 「宇宙際タイヒミューラー理論(Inter-Universal Teichmuller Theory)*2」という名の理論であるようだが、どうも、足す(+)の世界と、掛ける(✕)の世界を分けることがこの理論の肝だという。

 数学でも世界というものがあるのか、とか、足し算と掛け算がわかれる世界というのはどういう世界なのだろう、と数学の奥深さを知っただけでなく、この異次元のような概念の形成は、まるで別の番組を見ていた時に感じたアインシュタインの新たな理論を打ち立てた時と同じような「難解すぎて」理解不明な内容を含んでいるようであった。

 「同じものも、同じように見えるとは限らない」数学の次元の異なる世界では、同じものでも、異なった形で見えることもあるという。一見、異なるように見えても、本質は同じであるということもあるということであろうか。

 果たして、この理論が本当なのかどうかは今後応用がなされるかどうかというところであるとは思うが、将来に続いていく歴史が動いていることを実感できる出来事の一つになるのかもしれなく、目が離せない。